逢ひも見ず嘆きも初めずありし時
思ふことこそ身になかりしか
- 歌の意味
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逢うこともせず、嘆きを知り初めることもなかったころは、物思いなど、わが身にはなかったのに。
- 鑑賞
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巻第九 恋歌一 582
詞書「人につかはしける」
逢うこともなく嘆きを知ることもなかったころには、物思いなど身になかったのに、と詠んだ歌である。恋を知る前の穏やかな日々を思い返し、今の苦しみを嘆いている。
本巻の第五百六十三首も、逢う前と後の心を対比させている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「逢ひも見ず」は、逢うこともしないで、の意である。
二句「嘆きも初めず」は、嘆きを知り初めることもなく、の意である。
三句「ありし時」は、過ごしていたころは、の意である。
四句「思ふことこそ」は、物思いこそ、の意で、「こそ」は強めの係助詞である。
結句「身になかりしか」は、わが身にはなかったのに、の意で、四句の「こそ」を受けて已然形「しか」で結び、逆接の余情を残している。
なげきそむ:嘆きを知り始める
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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かく恋ふるものと知りせば夜はおきて 明くれば消ゆる露ならましを
- 次の歌
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恋のごとわりなきものはなかりけり かつ睦れつつかつぞ恋しき