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心をばつらきものぞと言ひおきて
変はらじと思ふ顔ぞ恋しき

歌の意味
人の心というものは薄情なものだと言い置いておきながら、自分は心変わりはするまいと思っている、あの人の顔が恋しい。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 948

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 人の心は薄情なものだと言い置いておきながら、自分は変わるまいと思っているようなあの人の顔が恋しい、と詠む歌である。心変わりを予言めいて語った相手の、それでも誠実そうに見えた顔を思い出し、恋しく思う心を詠んでいる。
 次歌の第九百四十九首とともに「顔」と「心」を詠む二首が並び、変わらない顔と変わる心という対照を共有している。

 初句「心をば」は、人の心というものを、の意である。
 二句「つらきものぞと」は、薄情なものだと、の意である。
 三句「言ひおきて」は、前もって言っておいて、の意である。
 四句「変はらじと思ふ」は、心変わりはするまいと思っている、の意で、「じ」は打消の意志を表す。次歌の第九百四十九首の四句「変はらぬ顔ぞ」と、「変はる」の語を共有している。
 結句「顔ぞ恋しき」は、その顔が恋しい、の意で、係助詞「ぞ」を受けて形容詞「恋し」の連体形で結んでいる。次歌の第九百四十九首と「顔ぞ」の語を共有している。

いひおく:言ひ置く。前もって言っておく
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
つらきをも思ひ知るやは我がために つらき人しも我を恨むる
次の歌
あさましや見しかとだにも思はぬに 変はらぬ顔ぞ心ならまし