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かく恋ふるものと知りせば夜はおきて
明くれば消ゆる露ならましを

歌の意味
これほど恋しく思うものと知っていたならば、夜は起きていて、夜が明ければ消える露であればよかったのに。
鑑賞
巻第九 恋歌一 581

詞書「人につかはしける」
 これほど恋しいものと知っていたら、夜は起きていて朝には消えてしまう、露のような身であればよかった、と詠んだ歌である。逢えない苦しみに、いっそ露のようにはかなく消えたいと願っている。
 夜に置いて朝に消える露の性質を、夜通し起きて恋に悩み、朝には消え入りたいという思いに重ねている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「かく恋ふる」は、これほど恋しく思う、の意である。
 二句「ものと知りせば」の「せば」は反実仮想の条件を表し、ものだと知っていたならば、の意である。
 三句「夜はおきて」は字余りで、「おき」は、人が「起き」と、露が「置き」を掛けた掛詞である。
 四句「明くれば消ゆる」は、夜が明ければ消える、の意で、「消ゆ」は露の縁語である。
 結句「露ならましを」の「まし」は反実仮想の助動詞で、露であればよかったのに、の意である。

おく:人が「起く」意と、露が「置く」意を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
色に出でて恋すてふ名ぞ立ちぬべき 涙に染むる袖の濃ければ
次の歌
逢ひも見ず嘆きも初めずありし時 思ふことこそ身になかりしか