色に出でて恋すてふ名ぞ立ちぬべき
涙に染むる袖の濃ければ
- 歌の意味
-
色に出て、恋をしているという噂が立ってしまいそうだ。涙で染める袖の色が濃いので。
- 鑑賞
-
巻第九 恋歌一 580
詞書「人につかはしける」
涙で染まった袖の色が濃いので、恋をしているという噂が立ってしまいそうだ、と詠んだ歌である。紅の涙で袖の色が濃く染まることで、隠していた恋が人に知られてしまうことを恐れている。
次歌から第五百八十三首までも詞書「人につかはしける」のもとに並び、人に送った恋の歌が続いている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「色に出でて」は字余りで、外にあらわれて、の意である。
二句「恋すてふ名ぞ」は、恋をしているという噂が、の意で、「ぞ」は強めの係助詞である。
三句「立ちぬべき」は、きっと立ってしまうだろう、の意で、二句の「ぞ」を受けて連体形で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなる。
四句「涙に染むる」は、涙で染める、の意で、紅の涙を思わせている。
結句「袖の濃ければ」は、袖の色が濃いので、の意で、三句の理由を倒置して示している。「濃し」は初句の「色」の縁語である。
そむ:色に染める
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
伊勢の海に延へても余る栲縄の 長き心は我ぞまされる
- 次の歌
-
かく恋ふるものと知りせば夜はおきて 明くれば消ゆる露ならましを