人を見て思ふ思ひもあるものを
空に恋ふるぞはかなかりける
- 歌の意味
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実際に相手を見て思いを寄せる恋もあるというのに、まだ見もしないで当てもなく恋い慕うのは、なんとはかないことだ。
- 鑑賞
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巻第十 恋歌二 601
詞書「女のもとに初めてつかはしける」
相手の姿を見て抱く恋もあるのに、まだ見ぬ人を当てもなく恋い慕うのははかないことだ、と詠んだ歌である。うわさだけで恋い初めた心のたよりなさを訴え、逢うことを求めている。
詞書によれば、女のもとへ初めて送った歌である。恋歌二の巻頭歌で、次歌の第六百二首、第六百三首も同じ詞書を持ち、初めて送る恋の歌三首で本巻が始まる。
作者の藤原忠房は、藤原興嗣の子で、右京大夫などを務めた。音楽にすぐれた人物として知られ、古今和歌集にも歌が採られている。
初句「人を見て」は、相手の姿を実際に見て、の意である。
二句「思ふ思ひも」は、恋い慕う思いも、の意で、「思ふ」と「思ひ」を重ねて思いの深さを表している。
三句「あるものを」の「ものを」は逆接の接続助詞で、あるというのに、の意である。
四句「空に恋ふるぞ」は、見もしないで当てもなく恋い慕うのは、の意で、「ぞ」は強めの係助詞である。初句の「見て」と対をなし、見ぬままの恋をいう。本巻の第六百三首の「見ぬ人を思ひやりつつ」と同じ趣向である。
結句「はかなかりける」は、はかないことだ、の意で、四句の「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっている。
こふ:恋い慕う
- 作者
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藤原忠房
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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長らへてあらぬまでにも言の葉の 深きはいかにあはれなりけり
- 次の歌
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ひとりのみ思へば苦しいかにして 同じ心に人を教へむ