つらくともあらんとぞ思ふよそにても
人や消ぬると聞かまほしさに
- 歌の意味
-
つらくても生きながらえていようと思う。よそながらでも、あなたが恋に焦がれて死んでしまったかと聞きたいので。
- 鑑賞
-
巻第十 恋歌二 627
詞書「相知りて侍りける人のもとより、久しく訪はずして、いかにぞ、まだ生きたりやと戯れて侍りければ」
つらくても生きていようと思う、よそながらでもあなたが恋に死んだと聞きたいから、と詠んだ歌である。長く訪れないうえに「まだ生きているか」とからかってきた相手に、皮肉を込めて切り返している。
詞書によれば、親しくしていた人が長く訪れないまま、どうしている、まだ生きているかと戯れてきたので詠んだ歌である。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「つらくとも」は、つらくても、の意である。
二句「あらんとぞ思ふ」は、生きながらえていようと思う、の意で、「ぞ」は強めの係助詞、連体形「思ふ」で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなる。
三句「よそにても」は、離れた所からでも、よそながらでも、の意である。
四句「人や消ぬると」は、あなたが死んでしまったかと、の意で、「や」は疑問の係助詞、連体形「ぬる」で結んでいる。
結句「聞かまほしさに」は、聞きたいので、の意で、初句から二句までと倒置の関係にある。
く:消える、死ぬ
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
我がごとや君も恋ふらん白露の おきても寝ても袖ぞ乾かぬ
- 次の歌
-
暮れぬとて寝てゆくべくもあらなくに たどるたどるも帰るまされり