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唐錦惜しき我が名はたち果てて
いかにせよとか今はつれなき

歌の意味
唐錦を裁ち切るように、惜しい私の評判はすっかり立ってしまったのに、どうしろというので、今になってつれないのか。
鑑賞
巻第十 恋歌二 685

詞書「男のもとにつかはしける」
 大切な我が評判はすっかり立ってしまったのに、どうしろというので今になってつれないのか、と詠んだ歌である。二人の仲がうわさになったあとで冷たくなった男を、評判を失った女の立場から責めている。
 詞書によれば、男に送った歌である。本巻の第六百三十四首も惜しい評判を詠み、うわさを恐れる女の心を共有している。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「唐錦」は、中国渡来の美しい錦で、「惜し」「たつ」を導いている。
 二句「惜しき我が名は」は、惜しい私の評判は、の意である。
 三句「たち果てて」の「たち」は、錦を「裁ち」の意と、評判が「立ち」の意を掛けた掛詞で、すっかり立ってしまって、の意である。
 四句「いかにせよとか」は、どうしろというので、の意で、「か」は疑問の係助詞である。
 結句「今はつれなき」は、今になってつれないのか、の意で、四句の「か」を受けて連体形「つれなき」で結ぶ係り結びとなっている。

からにしき:中国渡来の美しい錦
たつ:錦を「裁つ」意と、評判が「立つ」意を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
ひとり寝のわびしきままに起きゐつつ 月をあはれと忌みぞかねつる
次の歌
人づてに言ふ言の葉の中よりぞ 思ひつくばの山は見えける