古典和歌stream

下紐のしるしとするも解けなくに
語るがごとはあらずもあるかな

歌の意味
下紐が解けることを恋のしるしにするといっても、私の下紐は少しも解けないのだから、あなたが語るようなことではないのだなあ。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 702

詞書「返し」
 下紐が解けるのを恋のしるしというが、少しも解けないのだから、あなたの言うような思いではないのだろう、と詠んだ返歌である。相手の用いた下紐の俗信をそのまま逆手に取り、思いの真偽を疑ってみせている。
 前歌の第七百一首に対する返しで、女の側から詠まれた歌である。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「下紐の」は、前歌の三句「下紐の」を受けたもので、同じ語で応じている。
 二句「しるしとするも」は、しるしとするといっても、の意である。
 三句「解けなくに」は、解けないのに、の意で、「なくに」は打消を含む逆接の言い方である。前歌の四句「解けむを」に対し、解けないと切り返している。
 四句「語るがごとは」は、あなたが語るようなことは、の意である。
 結句「あらずもあるかな」は、そうではないのだなあ、の意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。

しるし:前触れ、証拠
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
恋しとはさらにも言はじ下紐の 解けむを人はそれと知らなむ
次の歌
うつつにもはかなきことのわびしきは 寝なくに夢と思ふなりけり