古典和歌stream

うつつにもはかなきことのわびしきは
寝なくに夢と思ふなりけり

歌の意味
現実においても頼りないことがつらいのは、寝てもいないのに、それを夢だと思ってしまうからなのだ。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 703

詞書「女のいと思ひはなれていふにつかはしける」
 現実でもはかないことがつらいのは、寝てもいないのにまるで夢のように思えるからだ、と詠んだ歌である。相手の冷たい言葉を受け、二人の仲が夢のように頼りないものになった嘆きを述べている。
 詞書によれば、女がすっかり思いを離れたように言ってきたので送った歌である。次歌の第七百四首も三句を「わびしきは」、結句を「思ふなりけり」とし、同じ型で詠まれている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「うつつにも」は、現実においても、の意である。
 二句「はかなきことの」は、頼りないことが、の意である。
 三句「わびしきは」は、つらいのは、の意である。次歌の第七百四首の三句も「わびしきは」で、同じ句を共有している。
 四句「寝なくに夢と」は、寝てもいないのに夢だと、の意で、初句の「うつつ」と「夢」が対をなしている。
 結句「思ふなりけり」は、思うからなのだ、の意で、「なりけり」は気づきの詠嘆を表す。次歌の結句と同じである。

うつつ:現実
わぶ:つらく思う、思い悩む
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
下紐のしるしとするも解けなくに 語るがごとはあらずもあるかな
次の歌
手向けせぬ別れする身のわびしきは 人目を旅と思ふなりけり