手向けせぬ別れする身のわびしきは
人目を旅と思ふなりけり
- 歌の意味
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旅立ちのように手向けもしない別れをする身がつらいのは、人目をはばかって逢えないことを、遠い旅のように思うからなのだ。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌三 704
詞書「宮仕へする女の、あひがたく侍りけるに」
手向けもしない別れをする身がつらいのは、人目を旅のように隔てと思うからだ、と詠んだ歌である。近くにいながら人目のために逢えない恋を、遠く旅に出る別れになぞらえている。
詞書によれば、宮仕えをしている女がなかなか逢えなかったときに詠んだ歌である。前歌の第七百三首と三句、結句を同じくし、同じ型で詠まれている。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の一人で、土佐守などを務めた。『土佐日記』の作者としても知られ、三十六歌仙の一人である。
初句「手向けせぬ」は、手向けもしない、の意である。旅立つときには道の神に幣を手向けて無事を祈るが、その手向けもしない別れをいう。
二句「別れする身の」は、別れをする我が身が、の意である。
三句「わびしきは」は、つらいのは、の意で、前歌の三句と同じ句である。
四句「人目を旅と」は、人目を旅のように、の意で、人目に隔てられて逢えないことを、旅の隔たりに見立てている。
結句「思ふなりけり」は、思うからなのだ、の意で、前歌の結句と同じ句である。
たむけ:旅の無事を祈り、道の神に幣などを供えること
ひとめ:他人の見る目
- 作者
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紀貫之
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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うつつにもはかなきことのわびしきは 寝なくに夢と思ふなりけり
- 次の歌
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宿かへて待つにも見えずなりぬれば つらき所の多くもあるかな