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宿かへて待つにも見えずなりぬれば
つらき所の多くもあるかな

歌の意味
住まいを変えて待っていても、あなたは姿を見せなくなってしまったので、あなたにとってつらい所というのは、ずいぶん多くあるものだなあ。
鑑賞
巻第十一 恋歌三 705

詞書「かりそめなる所に侍りける女に、心かはりにける男の、ここにてはかく便なき所なれば、心ざしはありながらなむえ立ち寄らぬと言へりければ、所をかへて待ちけるに見えざりければ、女」
 住まいを変えて待っていても来なくなったので、あなたにとってつらい所は多いのだなあ、と詠んだ歌である。場所のせいにして訪れなかった男の言い訳を、皮肉をこめて切り返している。
 詞書によれば、仮住まいにいた女のもとに、心変わりした男が、ここは不便な所なので思いはあっても立ち寄れないと言ってきた。そこで女は住まいを移して待ったが、男は姿を見せなかったので詠んだ歌である。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。詞書によれば女の歌である。

 初句「宿かへて」は、住まいを変えて、の意である。
 二句「待つにも見えず」は、待っていても姿を見せない、の意である。
 三句「なりぬれば」は、なってしまったので、の意である。
 四句「つらき所の」は、つらい所が、の意で、男が「便なき所」と言ったことを受け、どこへ移っても来ないのは、どこもつらい所なのだろうと皮肉っている。
 結句「多くもあるかな」は、多くもあるものだなあ、の意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。

やど:住まい、家
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
手向けせぬ別れする身のわびしきは 人目を旅と思ふなりけり
次の歌
思はむと頼めし人は変はらじを 問はれぬ我やあらぬなるらん