いかで我人にも問はむ暁の
飽かぬ別れや何に似たりと
- 歌の意味
-
どうにかして私は人に尋ねてみたい。夜明け前の、名残の尽きない別れはいったい何に似ているのかと。
- 鑑賞
-
巻第十一 恋歌三 719
詞書「題しらず」
どうにかして人に尋ねたい、暁の名残惜しい別れは何に似ているのかと、と詠んだ歌である。たとえようもない後朝の別れのつらさを、人に問うという形で強調している。
本巻ではこの歌から第七百二十一首まで、暁、けさ、しののめと、夜明けの別れを詠んだ歌が続いている。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の一人で、土佐守などを務めた。『土佐日記』の作者としても知られ、三十六歌仙の一人である。
初句「いかで我」は、どうにかして私は、の意である。
二句「人にも問はむ」は、人にも尋ねよう、の意で、「む」は意志を表す。ここで句切れとなり、三句以下と倒置の関係にある。
三句「暁の」は、夜明け前のまだ暗いころの、の意である。次歌の第七百二十首の「けさ」、第七百二十一首の「しののめ」と、夜明けの時を表す語が続いている。
四句「飽かぬ別れや」は、名残の尽きない別れは、の意で、「や」は疑問を表す。
結句「何に似たりと」は、何に似ているのかと、の意である。
あかつき:夜明け前のまだ暗いころ
- 作者
-
紀貫之
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
鈴鹿山伊勢をのあまの捨て衣 しほなれたりと人や見るらん
- 次の歌
-
恋しきに消えかへりつつ朝露の けさはおきゐん心地こそせね