- 歌の意味
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本当に紅色に涙が濃く染まるのなら、緑色の袖も紅葉のように見えるだろうに。そうは見えないではないか。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌四 812
詞書「返し」
紅に涙が濃いのなら緑の袖も紅葉と見えるだろうに、と詠んだ歌である。前歌で涙が紅に染まると訴えた相手に対し、それなら緑の袖も紅葉のように色づくはずだと、その誇張をからかうように切り返している。
前歌の第八百十一首への返しで、紅の涙をめぐる一連の三首目である。緑の袖は六位の官人が着る袍の色ともされ、相手の身分を踏まえた応答とも読める。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。なお本文の作者表記は「よみ人も」とあり、よみ人しらずを示している。
初句「紅に」は、紅色に、の意で、前歌の第八百十一首の初句をそのまま受けている。
二句「涙し濃くは」は、涙が濃いのならば、の意で、「し」は強めの副助詞、「は」は仮定を表す。
三句「緑なる」は、緑色の、の意で、紅と緑の色の対比を際立たせている。本巻の第八百三十四首、第八百三十五首でも、松の緑と紅葉の色が対比されている。
四句「袖も紅葉と」は、袖も紅葉のように、の意である。
結句「見えましものを」は、見えるだろうに、の意で、「まし」は反実仮想の助動詞であり、実際にはそう見えないことを暗に示している。
もみぢ:秋に赤や黄に色づいた木の葉
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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紅に涙うつると聞きしをば などいつはりと我が思ひけん
- 次の歌
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いにしへの野中の清水見るからに さしくむものは涙なりけり