逢ふとだにかたみに見ゆるものならば
忘るるほどもあらましものを
- 歌の意味
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せめて逢うということだけでも、互いに見えるものであったならば、忘れる間もあるだろうに。
- 鑑賞
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巻第十二 恋歌四 822
詞書「題しらず」
せめて逢うことだけでも互いに見えるのなら、忘れる間もあろうに、と詠んだ歌である。逢うことのかなわない恋は形見さえ残らず、そのために忘れることもできないという苦しさを詠んでいる。
本巻の第八百二十首の結句「わすれがたみに」と同じく、「かたみ」の語を用いている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。なお本文の作者表記は「よみ人も」とあり、よみ人しらずを示している。
初句「逢ふとだに」は、逢うということだけでも、の意で、「だに」は最小限の願いを表す。
二句「かたみに見ゆる」は、互いに見える、の意で、「かたみに」に「形見」の意を響かせている。第八百二十首の「わすれがたみ」と同じ音を用いている。
三句「ものならば」は、ものであるならば、の意で、仮定を表す。
四句「忘るるほども」は、忘れる間も、の意である。
結句「あらましものを」は、あるだろうに、の意で、「まし」は反実仮想を表し、「ものを」で逆接の余情を残している。
かたみ:「互いに」の意の「かたみに」に、「形見」の意を響かせる
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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もしもやとあひ見むことを頼まずは かく経るほどにまづぞ消なまし
- 次の歌
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音にのみ声を聞くかなあしひきの 山下水にあらぬものから