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音にのみ声を聞くかなあしひきの
山下水にあらぬものから

歌の意味
うわさにばかり、あなたの声を聞くことだ。木陰を人知れず流れる山の下水でもないのに。
鑑賞
巻第十二 恋歌四 823

詞書「題しらず」
 うわさにばかり声を聞くことだ、山の下水でもないのに、と詠んだ歌である。姿は見えず音だけが聞こえる山の下水にたとえて、うわさでしか相手を知ることのできないもどかしさを訴えている。
 本巻の第八百六十首、第八百六十一首も「山下水」「音にこそ聞け」を詠む贈答であり、同じ景物と表現を共有している。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。なお本文の作者表記は「よみ人も」とあり、よみ人しらずを示している。

 初句「音にのみ」は、うわさにばかり、の意で、「のみ」は限定を表す。本巻の第八百六十一首の結句「音にこそ聞け」と対応している。
 二句「声を聞くかな」は、声を聞くことだ、の意で、「かな」は詠嘆を表す。ここで句切れとなる。
 三句「あしひきの」は、「山」にかかる枕詞である。
 四句「山下水に」は、山陰や木の下を人目につかずに流れる水に、の意である。本巻の第八百六十首も「山下水」を詠んでいる。
 結句「あらぬものから」は、ないのに、の意で、「ものから」は逆接を表す。

おと:うわさ、評判
やましたみづ:山陰や木の下を人目につかずに流れる水
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
逢ふとだにかたみに見ゆるものならば 忘るるほどもあらましものを
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あきとてや今は限りの立ちぬらん 思ひにあへぬものならなくに