寄る潮のみちくる空もおもほえず
あふことなみに帰ると思へば
- 歌の意味
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寄せる潮が満ちてくるように、帰りの道をたどっている心地もしない。逢うこともできず、浪が返すように帰るのだと思うと。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌五 965
詞書「人のもとにまかりけるを、逢はでのみ返し侍りければ、道より言ひつかはしける」
寄せる潮が満ちてくるように道を来た心地もしない、逢うこともできず浪のように帰ると思うと、と詠んだ歌である。逢えずに引き返す道すがらの虚しさを、満ちては引く潮と寄せては返す浪に重ねて詠んでいる。
詞書によれば、女のもとへ行ったのに逢わずに帰されてばかりいたので、帰り道から言い送った歌である。潮、満つ、浪、帰るといった海の縁語を連ね、帰るほかない身の嘆きを詠んでいる。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「寄る潮の」は、寄せる潮の、の意で、二句の「みち」を導いている。
二句「みちくる空も」は、道を来る心地も、の意で、「みち」に潮が「満ち」と帰る「道」を掛けている。「空」は心地、気持ちの意である。
三句「おもほえず」は、思われない、の意で、ここで句切れとなり、以下と倒置になっている。
四句「あふことなみに」は、逢うこともないので、の意で、「なみ」に「無み」と「浪」を掛けている。
結句「帰ると思へば」は、帰るのだと思うと、の意で、浪が返ることと自分が帰ることを重ねている。
みつ:潮が「満つ」と、帰る「道」を掛ける
そら:心地、気持ち
なみ:「無み」と、海の「浪」を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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いさやまだ人の心もしら露の おくにもとにも袖のみぞひつ
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数ならぬ身は山の端にあらねども 多くのつきを過ぐしつるかな