数ならぬ身は山の端にあらねども
多くのつきを過ぐしつるかな
- 歌の意味
-
取るに足らない我が身は山の端ではないけれども、山の端が多くの月を送り出すように、多くの月日を待ちながら過ごしてしまったことだ。
- 鑑賞
-
巻第十三 恋歌五 966
詞書「人を思ひかけて言ひわたり侍りけるを、待ち遠にのみ侍りければ」
取るに足らない我が身は山の端ではないけれども、多くの月を過ごしてしまった、と詠んだ歌である。山の端が多くの月を見送るように、自分も多くの月日を待つばかりで過ごしたと、待ち遠しい恋の長さを嘆いている。
詞書によれば、人に思いをかけて言い寄り続けていたが、いつまでも待ち遠しいばかりだったので詠んだ歌である。初句二句の「数ならぬ身は」は、本巻の第九百七十七首と同じ句である。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「数ならぬ」は、取るに足らない、の意で、自分を卑下している。
二句「身は山の端に」は、我が身は山の端では、の意である。本巻の第九百七十七首と同じく「数ならぬ身は」と続いている。
三句「あらねども」は、ないけれども、の意で、「ども」は逆接の接続助詞である。
四句「多くのつきを」は、多くの月を、の意で、「つき」に空の「月」と「月日」を掛けている。
結句「過ぐしつるかな」は、過ごしてしまったことだ、の意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。
かずならぬ:物の数にも入らない、取るに足らない
やまのは:山の稜線、空と接するあたり
つき:空の「月」と、「月日」を掛ける
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
寄る潮のみちくる空もおもほえず あふことなみに帰ると思へば
- 次の歌
-
頼めつつ逢はで年経るいつはりに 懲りぬ心を人は知らなん