うちわびて呼ばはむ声に山びこの
答へぬ空はあらじとぞ思ふ
- 歌の意味
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思い悩んで呼びかける私の声に、山びこが答えないような空はあるまいと思う。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌五 969
詞書「返事せぬ人につかはしける」
思い悩んで呼びかける声に、山びこが答えない空はあるまいと思う、と詠んだ歌である。どんな空にも山びこは答えるものなのに、あなたは返事をくれないと、答えてくれない相手を責めている。
詞書によれば、返事をくれない人に送った歌である。次歌の第九百七十首は相手の返しで、山びこと空の語を受けて答えている。さらに第九百七十一首はその後のやりとりで、三首が一連の贈答となっている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
なお本文の四句は「こたへぬそらは」とあり、読み仮名の行の「こたへぬやまは」と一致しない。次歌も「むなしきそら」と空の語で答えており、ここでは本文の表記に従う。
初句「うちわびて」は、思い悩んで、の意で、「うち」は語調を整える接頭語である。
二句「呼ばはむ声に」は、呼びかける声に、の意である。
三句「山びこの」は、山びこの、の意で、こだまをいう。
四句「答へぬ空は」は、答えない空は、の意である。
結句「あらじとぞ思ふ」は、ないだろうと思う、の意で、「じ」は打消しの推量、「ぞ」は強めの係助詞で、連体形「思ふ」で結ぶ係り結びとなっている。
わぶ:思い悩む、困り果てる
よばふ:呼び続ける、呼びかける
やまびこ:山や谷で声が反響すること、こだま
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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夏虫の知る知る迷ふおもひをば 懲りぬ悲しと誰か見ざらん
- 次の歌
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山びこの声のまにまに訪ひ行かば むなしき空に行きや帰らん