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つらけれど恨むる限りありければ
物は言はれで音こそ泣かるれ

歌の意味
つれないけれども、恨むことにも限りがあったので、もう何も言えずに、ただ声をあげて泣くばかりである。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 974

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 つれないけれども恨むことにも限りがあったので、もう何も言えず声をあげて泣くばかりだ、と詠む歌である。恨み言さえ言い尽くしてしまい、あとはただ泣くほかない恋の行き詰まりを詠んでいる。

 初句「つらけれど」は、つれないけれども、の意である。
 二句「恨むる限り」は、恨むことの限度、の意である。
 三句「ありければ」は、あったので、の意である。
 四句「物は言はれで」は、何も言うことができずに、の意で、「れ」は可能の助動詞「る」の未然形、「で」は打消の接続助詞である。
 結句「音こそ泣かるれ」は、声をあげて泣かずにはいられない、の意で、「るれ」は自発の助動詞「る」の已然形で、係助詞「こそ」を受けて結んでいる。本巻の第九百八十五首の結句「音をも泣かまし」と、「音を泣く」の語を共有している。

ねをなく:音を泣く。声をあげて泣く
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
思はずはつれなきこともつらからじ 頼めば人を怨みつるかな
次の歌
紅の八入の衣かくしあらば 思ひそめずぞあるべかりける