行き帰り来ても聞かなん逢坂の
関に替はれる人もありやと
- 歌の意味
-
行って帰って来てでも、確かめて聞いてほしい。逢坂の関で、あなたと替わった人など本当にいるのかと。
- 鑑賞
-
巻第十三 恋歌五 983
詞書「又女のつかはしける」
行って帰って来てでも聞いてほしい、逢坂の関にあなたと替わった人などいるのかと、と詠んだ歌である。関守が替わったと言われたのに対し、自分には新しい男などいないと打ち消し、戻って来て確かめてほしいと訴えている。
詞書によれば、前歌の返しを受けて、女がまた送った歌である。前歌の「改まる」を「替はれる」と受け、逢坂の関をめぐる贈答が続いている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
なお本文の二句は「きてもきかなん」とあり、読み仮名の行の「きてもきなかむ」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
初句「行き帰り」は、行って帰って、の意で、東国から戻ることを表している。
二句「来ても聞かなん」は、来てでも聞いてほしい、の意で、「なん」は他に対する願望を表す終助詞「なむ」である。ここで句切れとなり、以下と倒置になっている。
三句「逢坂の」は、逢坂の、の意で、前の二首と同じ語である。
四句「関に替はれる」は、関で替わった、の意で、前歌の「改まる」を受けている。「る」は存続の助動詞「り」の連体形である。
結句「人もありやと」は、人などいるのかと、の意で、「や」は疑問の係助詞である。
ゆきかへる:行って帰る、往復する
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
関守が改まるてふ逢坂の 木綿付け鳥は鳴きつつぞ行く
- 次の歌
-
守る人のあるとは聞けど逢坂の 関もとどめぬ我が涙かな