知らざりし時だに越えし相坂を
などいまさらにわれ迷ふらん
- 歌の意味
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まだ逢うことを知らなかった時でさえ越えた逢坂を、どうして今さら私は越えられずに迷っているのだろう。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌六 1038
詞書「逢ひにける女の、又逢はざりければ」
まだ知らなかった時でさえ越えた逢坂を、どうして今さら迷うのだろう、と詠んだ歌である。逢坂の「逢ふ」に男女の逢瀬を重ね、初めてでさえ越えられた逢坂を、一度逢った後になって越えられずに迷っていると嘆いている。
詞書によれば、一度契りを結んだ女が、その後は逢ってくれなかったので詠んだ歌である。巻末の第千七十四首も「相坂山」を詠んでおり、逢うことへの思いが逢坂に託されている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「知らざりし」は、知らなかった、の意で、まだ逢瀬を知らなかった頃を指している。
二句「時だに越えし」は、時でさえ越えた、の意で、「だに」は軽いものを挙げて重いものを類推させる副助詞である。
三句「相坂を」は、逢坂を、の意で、「相坂」に男女が「逢ふ」意を重ねている。巻末の第千七十四首の四句にも「相坂山」が詠まれている。
四句「などいまさらに」は、どうして今さら、の意で、「など」は疑問を表し、結句の連体形「らん」で結んでいる。
結句「われ迷ふらん」は、私は迷っているのだろう、の意で、「らん」は原因を推量する助動詞である。
あふさか:近江国と山城国の境の逢坂山。その関。「逢ふ」を響かせる
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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影見れば奥へ入りける君により などか涙のとへは出づらん
- 次の歌
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飽かずして枕の上に別れにし 夢路を又も尋ねてしかな