身は早く奈良の都になりにしを
恋しきことの古りせざるらん
- 歌の意味
-
この身はとうに奈良の古い都のように古びてしまったのに、恋しいことだけは、どうして古びないのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第十四 恋歌四 861
詞書は前の歌に続き「題しらず」
わが身はとうに古都となった奈良の都のように古びてしまったのに、恋しい思いだけはどうして古びないのだろうかと嘆く歌である。年老いても衰えることのない恋心を、都が移って古びた奈良の都にたとえている。
初句「身は早く」は、この身はとっくに、の意である。
二句「奈良の都に」は、奈良の都のように、の意である。都が平安京に移って古都となった奈良を、古びたもののたとえとしている。
三句「なりにしを」は、なってしまったのに、の意で、「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形、「し」は過去の助動詞「き」の連体形、「を」は逆接を表す。
四句「恋しきことの」は、恋しい思いが、の意である。
結句「古りせざるらん」は、古びることがないのだろうか、の意で、「らん」は原因を推量する助動詞である。次歌の第八百六十二首の二句「古りにし恋の」と、恋の「古る」ことを詠む点で対をなし、こちらは古びない恋、次歌は古びて神さびた恋を詠んでいる。
ふる:古る。古くなる。年を経る
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
玉川にさらす手作りさらさらに 昔の人の恋しきやなぞ
- 次の歌
-
石上古りにし恋の神さびて 祟るに我はねぎぞかねつる