古典和歌stream

わが恋の消ゆる間もなく苦しきは
逢はぬなげきや燃えわたるらん

歌の意味
私の恋の火が消える間もなく苦しいのは、逢えない嘆きという投げ木が、絶えず燃え続けているからだろうか。
鑑賞
巻第十三 恋歌五 989

詞書「題しらず」
 私の恋が消える間もなく苦しいのは、逢えない嘆きが燃え続けているからだろうか、と詠んだ歌である。恋を火にたとえ、逢えない嘆きを薪の「投げ木」に重ねて、絶えず燃え続ける恋の苦しみを詠んでいる。
 この歌から巻末の第九百九十三首まで、男女の贈答が五首続いている。消ゆ、燃ゆ、こがるといった火の縁語が受け継がれ、のちに河や瀬へと移って巻を閉じている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「わが恋の」は、私の恋の、の意で、恋を火になぞらえている。
 二句「消ゆる間もなく」は、消える間もなく、の意で、火が「消ゆ」ことをふまえている。
 三句「苦しきは」は、苦しいのは、の意である。
 四句「逢はぬなげきや」は、逢えない嘆きが、の意で、「なげき」に「嘆き」と薪の「投げ木」を掛けている。「や」は疑問の係助詞である。
 結句「燃えわたるらん」は、燃え続けているのだろうか、の意で、「らん」は現在の原因を推量する助動詞「らむ」で、四句の「や」を受けて連体形で結んでいる。

なげき:「嘆き」と、薪の意の「投げ木」を掛ける
もえわたる:燃え続ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
よそなれど心ばかりはかけたるを などかおもひに乾かざるらん
次の歌
消えずのみ燃ゆるおもひは遠けれど 身もこがれぬるものにぞありける