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よそなれど心ばかりはかけたるを
などかおもひに乾かざるらん

歌の意味
離れてはいるけれど、心だけはあなたにかけているのに、衣を火にかけても乾かないように、どうして思いの火にあたっても涙の袖は乾かないのだろう。
鑑賞
巻第十三 恋歌五 988

詞書「女のもとにつかはしける」
 離れていても心だけはかけているのに、どうして思いの火に乾かないのだろう、と詠んだ歌である。衣を火にかけて乾かすことに心を相手にかけることを重ね、思いの火が燃えても涙の袖が乾かないと嘆いている。
 詞書によれば、女のもとへ送った歌である。思いの火で袖が乾かないと詠む趣向は、本巻の第九百七十三首、第九百七十四首の贈答と共通しており、次歌の第九百八十九首からは燃える思いを詠む贈答が巻末まで続いている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「よそなれど」は、離れているけれど、の意である。
 二句「心ばかりは」は、心だけは、の意である。
 三句「かけたるを」は、かけているのに、の意で、心をかけることと、衣を火にかけて乾かすことを重ねている。「を」は逆接の接続助詞である。
 四句「などかおもひに」は、どうして思いの火に、の意で、「おもひ」の「ひ」に「火」を掛けている。「か」は疑問の係助詞である。
 結句「乾かざるらん」は、乾かないのだろう、の意で、「らん」は現在の原因を推量する助動詞「らむ」で、四句の「か」を受けて連体形で結んでいる。

よそ:離れている所、無関係な所
おもひ:「思ひ」の「ひ」に「火」を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
白雲のみなひとむらに見えしかど 立ち出でて君を思ひそめてき
次の歌
わが恋の消ゆる間もなく苦しきは 逢はぬなげきや燃えわたるらん