石上古りにし恋の神さびて
祟るに我はねぎぞかねつる
- 歌の意味
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古くなってしまった恋が、神々しいほどに年を経て祟るので、私は祈って鎮めることもできないでいる。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌四 862
詞書は前の歌に続き「題しらず」
長い年月を経た恋が、まるで古い神のように祟るので、祈っても鎮めることができないと詠む歌である。古びてなお消えない恋の苦しみを、祟る神とそれを鎮めようとする祈りにたとえた、機知に富む一首である。
作者の「藤原忠房朝臣」は、藤原興嗣の子で、右京大夫などを務めた。管絃にすぐれ、古今和歌集にも歌が採られている。
初句「石上」は、「古る」にかかる枕詞である。大和国の石上の地に布留があることによる。本巻の第八百六十七首の初句も「石上」で、神の社を詠む歌が呼応している。
二句「古りにし恋の」は、古くなってしまった恋が、の意である。前歌の第八百六十一首が古びない恋を詠んだのを受けて、こちらは古びた恋を詠んでいる。
三句「神さびて」は、年を経て神々しくなって、の意である。古びた恋を古い神になぞらえている。
四句「祟るに我は」は、祟るので私は、の意である。「神さび」「祟る」「ねぎ」は、いずれも神にかかわる縁語である。
結句「ねぎぞかねつる」は、祈って鎮めることができずにいる、の意で、「かね」は、しかねる、できない意を表す。係助詞「ぞ」を受けて完了の助動詞「つ」の連体形「つる」で結んでいる。本巻の第八百七十六首の四句「堰きぞかねつる」と、同じ「ぞかねつる」の言い回しを用いている。
かみさぶ:神さぶ。年を経て神々しくなる。古びる
たたる:祟る。神や霊がわざわいをもたらす
ねぐ:祈ぐ。神に祈って加護を願う。心を和ませる
- 作者
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藤原忠房
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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身は早く奈良の都になりにしを 恋しきことの古りせざるらん
- 次の歌
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いかばかり苦しきものぞ葛城の 久米路の橋のなかの絶え間は