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訪ふことを待つに月日はこゆるぎの
磯にや出でて今はうらみん

歌の意味
あなたの訪れを待つうちに月日は過ぎ越えていった。こゆるぎの磯に出て浦を見るように、今はもうあなたを恨もうか。
鑑賞
巻第十四 恋歌六 1049

詞書「男の久しう訪はざりければ」
 訪れを待つうちに月日が過ぎたので、こゆるぎの磯に出て、今は恨もうか、と詠んだ歌である。相模国の歌枕の小余綾の磯に、月日が「越ゆる」意と、「浦見」に「恨み」を重ね、待ちくたびれて恨む気持ちに変わっていく心を詠んでいる。
 詞書によれば、男が久しく訪れなかったので詠んだ歌である。本巻の第千二十二首も「うらみ」に浦を見る意を掛けて恨みを詠んでおり、海辺の地名に寄せた恨みの歌が重ねられている。
 作者の右近は、藤原季縄の娘で、醍醐天皇の中宮穏子に仕えた女房である。小倉百人一首には「忘らるる身をば思はず誓ひてし」の歌が採られている。

 初句「訪ふことを」は、訪れることを、の意である。
 二句「待つに月日は」は、待つうちに月日は、の意である。
 三句「こゆるぎの」は、相模国の小余綾の、の意で、「こゆる」に月日が「越ゆる」意を掛けている。
 四句「磯にや出でて」は、磯に出て、の意で、「や」は疑問の係助詞で、結句の連体形「ん」で結ぶ係り結びとなっている。
 結句「今はうらみん」は、今は恨もうか、の意で、「うらみ」に「浦見」と「恨み」を掛け、磯の縁語としている。

こゆるぎ:相模国の小余綾の磯。月日が越ゆる意を掛ける
うらむ:恨む意と、浦を見る意を掛ける
作者
右近
出典
後撰和歌集
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花盛り過ぐしし人はつらけれど 言の葉をさへ隠しやはせん
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忘れ草名をもゆゆしみかりにても 生ふてふ宿は行きてだに見じ