せきもあへず涙の河の瀬を早み
かからんものと思ひやはせし
- 歌の意味
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せき止めることもできず、涙の川の瀬の流れが早いので、こんなことになるものだと思っただろうか、いや思いもしなかった。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌六 1058
詞書「思ふ人にえ逢ひ侍らで、忘られにければ」
せき止めることもできないほど涙の川の瀬が早いので、こうなるとは思いもしなかった、と詠んだ歌である。逢えないまま忘れられた悲しみを、せき止められない涙の川にたとえ、思いもよらない成り行きを嘆いている。
詞書によれば、思う人に逢うことができないまま、忘れられてしまったので詠んだ歌である。次歌の第千五十九首も「瀬を早み」と詠み、同じ句を共有する歌が並べて置かれている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「せきもあへず」は、せき止めることもできず、の意で、「あへず」は、しきれない、の意を表す。六音の字余りとなっている。
二句「涙の河の」は、涙の川の、の意で、あふれる涙を川にたとえている。
三句「瀬を早み」は、瀬の流れが早いので、の意で、「み」は原因を表す接尾語である。次歌の初句と同じ句である。
四句「かからんものと」は、このようになるものだと、の意である。
結句「思ひやはせし」は、思っただろうか、いや思わなかった、の意で、「やは」は反語の係助詞で、連体形「し」で結ぶ係り結びとなっている。
せく:水の流れをせき止める
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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さを鹿の声たかさごに聞こえしは 妻なき時の音にこそありけれ
- 次の歌
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瀬を早み絶えず流るる水よりも 絶えせぬものは恋にぞありける