恋ふれども逢ふ夜なき身は忘れ草
夢路にさへや生ひ繁るらん
- 歌の意味
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恋い慕っても逢う夜のない身には、忘れ草が夢の通い路にまで生い茂っているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌六 1060
詞書「題しらず」
恋しても逢う夜のない身には、忘れ草が夢路にまで生い茂るのだろうか、と詠んだ歌である。現実に逢えないばかりか、夢の中でさえ逢えないのは、忘れ草が夢の通い路までふさいでいるからだろうかと嘆いている。
本巻の第千五十首、第千五十一首の贈答に続いて忘れ草を詠み、第千三十九首の「夢路」とも響き合っている。前の贈答で宿に生えていた忘れ草が、本歌では夢路にまで広がっている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「恋ふれども」は、恋い慕っても、の意で、「ども」は逆接の接続助詞である。
二句「逢ふ夜なき身は」は、逢う夜のない身には、の意である。
三句「忘れ草」は、憂いを忘れるという萱草のことで、相手が自分を忘れることを重ねている。本巻の第千五十首の初句と同じ語である。
四句「夢路にさへや」は、夢の通い路にまでも、の意で、「や」は疑問の係助詞である。本巻の第千三十九首の四句にも「夢路」が詠まれている。
結句「生ひ繁るらん」は、生い茂っているのだろう、の意で、四句の「や」を受けて連体形「らん」で結ぶ係り結びとなっている。
わすれぐさ:萱草。身につけると憂いを忘れるとされた草
ゆめぢ:夢の中で通う道
おひしげる:生い茂る
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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瀬を早み絶えず流るる水よりも 絶えせぬものは恋にぞありける
- 次の歌
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世の中のうきはなべてもなかりけり 頼む限りぞ怨みられける