忘れなむと思ふ心のつくからに
言の葉さへや言へばゆゆしき
- 歌の意味
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私を忘れてしまおうと思う心がついたばかりに、言葉までも、口に出せば忌まわしいというのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌二 1152
詞書「みそか男したる女を、荒くは言はで問へど、ものも言はざりければ」
忘れてしまおうという心がついたせいで、言葉さえ口にすれば忌まわしいというのか、と詠んだ歌である。ひそかに他の男と通じた妻を穏やかに問いただしても何も答えないので、心が離れたために口をきくことさえ嫌うのかと嘆いている。
詞書によれば、ひそかに他の男を通わせていた妻を、荒々しくはとがめずに問うたが、何も言わなかったので詠んだ歌である。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「忘れなむと」は、忘れてしまおうと、の意で、「なむ」は完了の助動詞「ぬ」の未然形に意志の「む」がついた形である。字余りとなっている。
二句「思ふ心の」は、思う心が、の意である。
三句「つくからに」は、ついたばかりに、の意で、「からに」は原因を表す。
四句「言の葉さへや」は、言葉までも、の意で、「や」は疑問の係助詞で、結句の連体形「ゆゆしき」で結ぶ係り結びとなっている。
結句「言へばゆゆしき」は、口に出せば忌まわしいのか、の意で、四句の「や」を受けて結んでいる。
みそかをとこ:ひそかに通う男。間男
ゆゆし:忌まわしい。不吉だ
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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思ひ出でてとふ言の葉を誰見まし 身の白雲となりなましかば
- 次の歌
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隠れゐて我が憂きさまを水の上の 泡ともはやく思ひ消えなん