音にのみ聞きてはやまじ浅くとも
いざ汲み見てん山の井の水
- 歌の意味
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噂に聞くばかりで終わりにはするまい。たとえ浅くとも、さあ汲んでみよう、山の井の水を。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌二 1165
詞書「山の井の君につかはしける」
噂に聞くだけで終わりにはしない、浅くてもさあ汲んでみよう、山の井の水を、と詠んだ歌である。「山の井の君」と呼ばれる女性の名を山の井の水になぞらえ、たとえ浅い縁であっても、ぜひ逢って心を確かめたいと言い寄っている。
詞書によれば、山の井の君と呼ばれた女性に送った歌である。山の井の君がどのような人かは未詳である。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「音にのみ」は、噂にばかり、の意である。
二句「聞きてはやまじ」は、聞いて終わりにはするまい、の意で、「じ」は打消の意志を表す。ここで句切れとなる。
三句「浅くとも」は、たとえ浅くても、の意で、山の井の浅さに、縁の浅さを重ねている。
四句「いざ汲み見てん」は、さあ汲んでみよう、の意で、「てん」は強い意志を表す。水を汲む意に、相手と逢う意をこめている。
結句「山の井の水」は、山の井の水を、の意で、相手の呼び名を詠み込み、体言止めで結んでいる。本巻の第千百三十五首にも「山の井」が詠まれている。
やまのゐ:山の湧き水をためた所。ここは相手の女性の呼び名を詠み込む
くむ:水を汲む
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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世の中に知られぬ山に身なくとも 谷の心やいはで思はむ
- 次の歌
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死出の山たどるたどるも越えななで 憂き世の中に何帰りけん