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あさなけに世の憂き事をしのびつつ
ながめせし間に年は経にけり

歌の意味
朝に夕に世のつらいことを耐え忍びながら、物思いにふけっている間に、年月は過ぎてしまったことだ。
鑑賞
巻第十六 雑歌二 1174

詞書「男など侍らずして、年ごろ山里に籠り侍りける女を、昔あひ知りて侍りける人、道まかりけるついでに、久しう聞こえざりつるを、ここになりけりと言ひ入れて侍りければ」
 朝夕に世のつらさを耐え忍びつつ、物思いにふけっている間に年月は過ぎてしまった、と詠んだ歌である。夫もなく山里に籠って暮らす女が、久しぶりに声をかけてきた旧知の人に、ひっそりと過ぎた歳月を振り返って答えている。
 詞書によれば、夫などもなく長年山里に籠っていた女に、昔の知人が道のついでに、長く便りもなかったがここにいたのかと言い入れてきたので詠んだ歌である。小野小町の「花の色は移りにけりないたづらに我が身世にふるながめせし間に」と同じく「ながめせし間に」の句を用いている。
 作者の「土左」は土佐と呼ばれた女房で、詳しい伝は未詳である。

 初句「あさなけに」は、朝に夕に、いつも、の意である。
 二句「世の憂き事を」は、世のつらいことを、の意である。
 三句「しのびつつ」は、耐え忍びながら、の意で、「つつ」は継続を表す。
 四句「ながめせし間に」は、物思いにふけっていた間に、の意で、「ながめ」はぼんやりと物思いにふけることである。
 結句「年は経にけり」は、年月は過ぎてしまったことだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。

あさなけ:朝に夕に。いつも
ながむ:物思いにふけってぼんやり見やる
作者
土佐
出典
後撰和歌集
前の歌
身を憂しと人知れぬ世を尋ね来し 雲の八重立つ山にやはあらぬ
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春や来し秋や行きけんおぼつかな 陰の朽木と世を過ぐす身は