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帰りては声やたがはむ笛竹の
つらきひとよのかたみと思へば

歌の意味
お返ししたら、この笛の音色も変わってしまうだろうか。つれなく去ったあの一夜の形見と思うので。
鑑賞
巻第十六 雑歌二 1184

詞書「友達のもとにまかりて、盃あまたたびになりにければ、逃げてまかりけるを、とどめわづらひて、持て侍りける笛を取りとどめて、又のあしたにつかはしける」
 返したら笛の音も変わってしまうだろうか、つらい一夜の形見と思うので、と詠んだ歌である。酒宴から逃げ帰った友の笛を引き留めた主人が、竹の節に一夜を掛けて、名残惜しかった一夜の形見として笛を手放しがたい思いを伝えている。
 詞書によれば、友達が訪ねてきて盃が何度も重なったので逃げ帰ったのを、引き留めかねて、持っていた笛を取り上げて留め、翌朝に送った歌である。次歌に返しがあり、笛竹をめぐる贈答となっている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「帰りては」は、お返ししてしまったら、の意である。
 二句「声やたがはむ」は、音色が変わってしまうだろうか、の意で、「や」は疑問の係助詞で、連体形「む」で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなる。
 三句「笛竹の」は、笛にする竹の、の意で、笛を指している。次歌の三句にも同じ語が詠まれている。
 四句「つらきひとよの」は、つれない一夜の、の意で、「ひとよ」に「一夜」と、竹の縁の「一節」を掛けている。
 結句「かたみと思へば」は、形見と思うので、の意で、二句の理由を後から添える倒置となっている。

ふえたけ:笛にする竹。笛
ひとよ:一夜の意と、竹の一節の意を掛ける
かたみ:思い出のよすがとなる品
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
楢の葉の葉守の神のましけるを 知らでぞ折りし祟りなさるな
次の歌
ひとふしに恨みなはてそ笛竹の 声の内にも思ふ心あり