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身一つにあらぬばかりをおしなべて
行きめぐりてもなどか見ざらん

歌の意味
宮中が我が身一つのものではなくなったというだけのことで、皆と同じように巡って来て、どうして見ないことがあろうか。
鑑賞
巻第十九 離別歌 1323

詞書「帝御覧じて、御返し」
 宮中が我が身一つのものでなくなっただけで、巡って来てどうして見ないことがあろうか、と詠んだ歌である。前歌で伊勢が宮中を見ることもないと嘆いたのに対し、譲位して宮中は自分だけのものではなくなったが、また訪れて見ることはできると慰めている。
 詞書によれば、壁に書かれた前歌を帝が御覧になって詠んだ返しである。
 作者の「亭子の帝」は宇多天皇である。光孝天皇の皇子で、醍醐天皇に譲位したのち出家して法皇となった。亭子院を御所としたことから亭子院の帝とも呼ばれた。

 初句「身一つに」は、我が身一つのものに、の意である。
 二句「あらぬばかりを」は、ではなくなったというだけのことで、の意である。
 三句「おしなべて」は、すべて同じように、の意である。
 四句「行きめぐりても」は、巡って来ても、の意で、再び宮中を訪れることをいう。
 結句「などか見ざらん」は、どうして見ないことがあろうか、の意で、「か」は反語の係助詞で、連体形「ざらん」で結ぶ係り結びとなっている。前歌の四句「見ざらむ」を受けている。

ゆきめぐる:あちこちを巡る、再び巡って来る
作者
宇多天皇
出典
後撰和歌集
前の歌
別るれどあひも惜しまぬ百敷を 見ざらむことや何か悲しき
次の歌
別れゆくみちの雲居になりゆけば とまる心も空にこそなれ