袖濡れて別れはすとも唐衣
行くとな言ひそきたりとを見む
- 歌の意味
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袖を涙に濡らして別れはしても、この唐衣を着て「行く」とは言わないでほしい。あなたがこれを着たのを、来たものと見よう。
- 鑑賞
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巻第十九 離別歌 1328
詞書「旅にまかりける人に装束つかはすとて、添へてつかはしける」
袖を濡らして別れはしても、唐衣を着て行くとは言うな、着たのを来たと見よう、と詠んだ歌である。旅立つ人に装束を贈り、「着たり」と「来たり」を掛けて、別れを「行く」とは思わず、贈った衣を着てくれることを、そばに来てくれたものと見ようと詠んでいる。
詞書によれば、旅に出る人に装束を贈るにあたって添えた歌である。次歌はその返しで、二首は贈答の一組となっている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「袖濡れて」は、袖を涙に濡らして、の意である。
二句「別れはすとも」は、別れはしても、の意で、「とも」は逆接の仮定を表す。
三句「唐衣」は、美しい衣の意で、詞書の装束を指している。
四句「行くとな言ひそ」は、行くとは言わないでほしい、の意で、「な〜そ」は禁止を表す。ここで句切れとなる。
結句「きたりとを見む」の「きたり」は、衣を「着たり」と「来たり」を掛けた掛詞で、来たものと見よう、の意である。「着る」は「唐衣」の縁語で、四句の「行く」と「来たり」が対になっている。
さうぞく:衣服、装束
きたり:衣を「着たり」の意と、「来たり」を掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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君が行く方にありてふ涙川 まづは袖にぞ流るべらなる
- 次の歌
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別れ路は心もゆかず唐衣 着れば涙ぞ先にたちける