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別れ路は心もゆかず唐衣
着れば涙ぞ先にたちける

歌の意味
別れの道には心も進まず、この唐衣を着ると、涙が何よりも先に立ってしまった。
鑑賞
巻第十九 離別歌 1329

詞書「返し」
 別れの道は心も進まず、唐衣を着れば涙が先に立った、と詠んだ歌である。前歌で贈られた唐衣を受け、その衣を着ると、旅立つよりも先に涙がこぼれると、別れの悲しみを返している。
 前歌に対する返しである。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「別れ路は」は、別れて行く道は、の意である。
 二句「心もゆかず」は、心も進まず、満ち足りず、の意で、前歌の「行く」を受けている。
 三句「唐衣」は、美しい衣の意で、前歌の三句をそのまま受けている。
 四句「着れば涙ぞ」は、着ると涙が、の意で、前歌の「きたり」を受けている。「ぞ」は強意の係助詞である。
 結句「先にたちける」の「たち」は、衣を「裁ち」と旅に先立って「立ち」を掛けた掛詞で、涙が先に立った、の意である。四句の「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ係り結びとなっている。「裁つ」「着る」は「唐衣」の縁語である。

わかれぢ:別れて行く道
たつ:衣を「裁つ」意と、「立つ」意を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
袖濡れて別れはすとも唐衣 行くとな言ひそきたりとを見む
次の歌
添へてやる扇の風し心あらば 我が思ふ人の手をな離れそ