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目に見えぬ風に心をたぐへつつ
やらば霞の別れこそせめ

歌の意味
目に見えない風に私の心を添えて送るならば、風とともに去る霞のような別れをこそしよう。
鑑賞
巻第十九 離別歌 1343

詞書「返し」
 目に見えない風に心を添えて送るならば、霞の別れをこそしよう、と詠んだ歌である。前歌の、風のほかに訪ねる者はないという嘆きを受け、それなら目に見えない風に自分の心を託して送り、風とともに去る霞のように別れようと答えているとみられる。
 前歌に対する伊勢の返しである。
 作者の伊勢は、伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の女御藤原温子に仕えた。宇多天皇の寵を受け、のちに敦慶親王との間に中務を生んだ。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「難波潟短き葦のふしの間も」の歌が採られている。

 初句「目に見えぬ」は、目に見えない、の意である。
 二句「風に心を」は、風に私の心を、の意で、前歌の四句「風より外に」を受けている。
 三句「たぐへつつ」は、添えながら、の意で、「つつ」は継続を表す。
 四句「やらば霞の」は、送るならば、霞の、の意で、前歌の初句「春霞」を受けている。
 結句「別れこそせめ」は、別れをこそしよう、の意で、「こそ」を受けて已然形「め」で結ぶ係り結びとなっている。

たぐふ:添える、連れ立たせる
作者
伊勢
出典
後撰和歌集
前の歌
春霞はかなくたちて別るとも 風より外に誰か訪ふべき
次の歌
君が世はつるの郡にあえて来ね 定めなき世の疑ひもなく