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春霞はかなくたちて別るとも
風より外に誰か訪ふべき

歌の意味
春霞がはかなく立つように、あっけなく旅立って別れても、風のほかに誰が訪ねて来るだろうか。
鑑賞
巻第十九 離別歌 1342

詞書「題しらず」
 春霞がはかなく立つように別れても、風のほかに誰が訪ねようか、と詠んだ歌である。春霞の立つ季節にはかなく別れても、風のほかに訪ねて来る者はいないと、別れたあとの寂しさを訴えている。
 次歌は伊勢の返しで、二首は贈答の一組となっている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「春霞」は、春に立つ霞で、二句の「たち」を導いている。
 二句「はかなくたちて」の「たち」は、霞が「立ち」と、旅に「発ち」を掛けた掛詞である。
 三句「別るとも」は、別れても、の意で、「とも」は逆接の仮定を表す。
 四句「風より外に」は、風のほかに、の意で、風は霞を散らすものとして詠まれている。
 結句「誰か訪ふべき」は、誰が訪ねて来るだろうか、の意で、「か」は反語の係助詞で、連体形「べき」で結ぶ係り結びとなっている。次歌の初句「目に見えぬ風に」に受けられている。

たつ:霞が「立つ」意と、旅に「発つ」意を掛ける
とふ:訪ねる、見舞う
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
さらばよと別れし時に言はませば 我も涙におぼほれなまし
次の歌
目に見えぬ風に心をたぐへつつ やらば霞の別れこそせめ