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さもこそはあひ見むことの難からめ
忘れずとだに言ふ人のなき

歌の意味
いかにも、逢うことは難しいのだろう。けれども、せめて忘れていないとだけでも言ってくれる人がいないことよ。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 951

詞書「題しらず」
 逢うことが難しいのはいかにももっともだが、せめて忘れていないとだけでも言ってくれる人がいない、と詠む歌である。逢瀬がかなわないことはあきらめつつも、ひと言の便りさえないことへの寂しさと恨めしさを詠んでいる。
 作者の「伊勢」は、藤原継蔭の娘で、宇多天皇の中宮温子に仕え、宇多天皇の寵愛を受けて皇子を産んだ。三十六歌仙に数えられ、百人一首の「難波潟」の歌で知られる。

 初句「さもこそは」は、いかにもそのように、の意で、係助詞「こそ」が三句と係り結びをなしている。
 二句「あひ見むことの」は、逢うことが、の意で、「あひ見る」は男女が逢う意である。
 三句「難からめ」は、難しいのだろう、の意で、推量の助動詞「む」の已然形「め」で初句の「こそ」を受けて結び、下の句へ逆接で続いている。
 四句「忘れずとだに」は、せめて忘れていないとだけでも、の意で、「だに」は最小限の願いを表す。
 結句「言ふ人のなき」は、言ってくれる人がいない、の意で、形容詞「なし」の連体形で結ぶ連体止めとなっている。前歌の第九百五十首の二句「言ふべき人は」と、自分に言葉をかけてくれる人のいない嘆きで呼応している。

あひみる:相見る。男女が逢う
作者
伊勢
出典
拾遺和歌集
前の歌
あはれとも言ふべき人は思ほえで 身のいたづらになりぬべきかな
次の歌
逢ふことのなげきの本を尋ぬれば 独り寝よりぞ生ひはじめける