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世の中はいさともいさや風の音は
秋にあき添ふ心地こそすれ

歌の意味
二人の仲は、さあ、どうなのでしょう。風の音は、秋の悲しさの上に、さらに飽きられた悲しさが加わるような心地がする。
鑑賞
巻第十八 雑歌四 1293

詞書「返し」
 仲はさあどうでしょう、風の音は秋に飽きが添う心地がする、と詠んだ歌である。前歌の問いをはぐらかしつつ、秋風の音に「秋」と「飽き」を重ね、男に飽きられた悲しみが募る思いをほのめかしている。
 前歌に対する伊勢の返しである。
 作者の伊勢は、伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の女御藤原温子に仕えた。宇多天皇の寵を受け、のちに敦慶親王との間に中務を生んだ。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「難波潟短き葦のふしの間も」の歌が採られている。

 初句「世の中は」は、男女の仲は、の意で、前歌の初句をそのまま受けている。
 二句「いさともいさや」は、さあ、どうでしょう、の意で、「いさ」を重ねて答えをはぐらかしている。前歌の二句「いかにやいかに」に応じている。ここで句切れとなる。
 三句「風の音は」は、風の音は、の意で、前歌の三句「風の音を」を受けている。
 四句「秋にあき添ふ」の後の「あき」は、「秋」と「飽き」を掛けた掛詞で、秋の悲しさに、飽きられた悲しさが加わる、の意である。
 結句「心地こそすれ」は、心地がする、の意で、「こそ」を受けて已然形「すれ」で結ぶ係り結びとなっている。

あき:「秋」の意と、「飽き」を掛ける
作者
伊勢
出典
後撰和歌集
前の歌
世の中はいかにやいかに風の音を 聞くにも今は物や悲しき
次の歌
たとへ来る露と等しき身にしあらば 我が思ひにも消えんとやする