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恋ふる間に年の暮れなばなき人の
別れやいとど遠くなりなむ

歌の意味
恋い慕っているうちに年が暮れてしまったならば、亡き人との別れは、ますます遠くなってしまうのだろうか。
鑑賞
巻第二十 慶賀歌 1425

詞書「返し」
 恋い慕ううちに年が暮れたら、亡き人との別れはいっそう遠くなるのだろうか、と詠んだ歌である。前歌の、年とともに亡き人が帰るならという嘆きを受け、年が暮れれば帰るどころか、別れがますます遠い昔になってしまうと、尽きない悲しみに寄り添っている。
 前歌の藤原兼輔の歌に対する返しである。巻頭の第千三百六十八首が万代の長寿を祝う歌で始まったのに対し、巻末は年の暮れとともに遠ざかる別れを詠む歌で閉じられている。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐日記の作者としても知られ、小倉百人一首には「人はいさ心も知らずふるさとは」の歌が採られている。

 初句「恋ふる間に」は、恋い慕っているうちに、の意である。
 二句「年の暮れなば」は、年が暮れてしまったならば、の意で、「なば」は仮定を表す。前歌の四句「暮れゆく」を受けている。
 三句「なき人の」は、亡くなった人の、の意で、前歌の初句と同じ語である。
 四句「別れやいとど」は、別れはますます、の意で、「や」は疑問の係助詞である。
 結句「遠くなりなむ」は、遠くなってしまうのだろうか、の意で、四句の「や」を受けて連体形「なむ」で結ぶ係り結びとなっている。

こふ:恋い慕う
作者
紀貫之
出典
後撰和歌集
前の歌
なき人のともにし帰る年ならば 暮れゆく今日は嬉しからまし