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降る雪に色はまがひぬ梅の花
香にこそ似たるものなかりけれ

歌の意味
降る雪に色は紛れて見分けがつかなくなったが、梅の花よ、その香りにだけは似ているものがないのだった。
鑑賞
巻第一 春歌 14

詞書「同じ御時御屏風に」
 降る雪にまぎれて梅の花の色は見分けられなくなったが、香りだけは似るものがない、と色と香を対比して詠む。視覚では雪と区別できない梅も、香りによってはっきりとその存在を示すという趣向である。詞書によれば、前歌と同じく醍醐天皇の延喜の御代の屏風に添えた歌である。
 作者の「みつね」は凡河内躬恒である。古今和歌集の撰者の一人で、紀貫之と並び称された。三十六歌仙の一人に数えられる。

 初句「降る雪に」は、本巻の第十二首と同じく雪の中の梅を詠む。
 二句「色はまがひぬ」は、「まがふ」が見分けがつかなくなる意で、「ぬ」は完了の助動詞である。二句切れである。
 三句「梅の花」は、前の色と後の香とをつなぐ要の位置に置かれる。
 四句「香にこそ似たる」は、「こそ」が結句の已然形「けれ」で結ぶ係り結びで、色に対して香を際立たせる。
 結句「ものなかりけれ」は、梅の香に似たものはないのだったという気づきを表す。本巻の第十三首が雪と花とが一つになる景を詠んだのに対し、本歌は香によって両者を分けている。

まがふ:入り交じって見分けがつかなくなる
作者
凡河内躬恒
出典
拾遺和歌集
前の歌
梅が枝に降りかかりてぞ白雪の 花のたよりに折らるべらなる
次の歌
わが宿の梅の立ち枝や見えつらん 思ひのほかに君が来ませる