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難波潟茂りあへるは君が代に
あしかるわざをせねばなるべし

歌の意味
難波潟に葦が生い茂っているのは、あなたの治める世に、葦を刈ることも悪いことも行われないからなのだろう。
鑑賞
巻第九 雑歌下 538

詞書「津の守に侍りける人のもとにて詠み侍りける」
 難波潟に葦が生い茂っているのは、あなたの治める世に、葦を刈ることも悪いことも行われないからだろうと詠む歌である。詞書から、摂津守であった人のもとで詠んだ歌とわかる。「葦刈る」と「悪しかる」を掛け、葦の茂る難波潟の景色に、国守の善政をたたえる心を重ねている。前歌の第五百三十七首に続き、難波を詠む歌である。
 作者の「ただみ」は壬生忠見である。壬生忠岑の子で、三十六歌仙に数えられる。天徳内裏歌合で平兼盛と競った百人一首の「恋すてふ」の歌で知られる。

 初句「難波潟」は、難波の干潟、の意で、前歌の第五百三十七首の初句「難波江の」と難波の地名を共有している。
 二句「茂りあへるは」は、生い茂っているのは、の意で、葦が茂っている様子をいう。
 三句「君が代に」は、あなたの治める世に、の意で、摂津守の治世を指す。
 四句「あしかるわざを」は、「あしかる」が「葦刈る」と「悪しかる」を掛ける掛詞である。葦を刈ること、悪い行い、の二つの意を重ねている。前歌の二句「葦の花毛の」から続く「葦」の語で、次の次の歌の第五百四十首の二句「あしかりけりと」も同じ掛詞を用いている。
 結句「せねばなるべし」は、しないからなのだろう、の意で、「ね」は打消の助動詞「ず」の已然形、「べし」は推量の助動詞である。

なにはがた:難波潟。摂津国の難波の干潟
あしかる:「葦刈る」と「悪しかる」を掛ける
わざ:業。行い
作者
壬生忠見
出典
拾遺和歌集
前の歌
難波江の葦の花毛の交じれるは 津の国かひの駒にやあるらん
次の歌
都には住みわびはてて津の国の すみよしと聞く里にこそ行け