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都には住みわびはてて津の国の
すみよしと聞く里にこそ行け

歌の意味
都にはすっかり住みづらくなって、津の国の、住みよいと聞く住吉の里へこうして行くのだ。
鑑賞
巻第九 雑歌下 539

詞書「津の国にまかれりけるに、知りたる人に逢ひ侍りて」
 都にはすっかり住みづらくなったので、住みよいと聞く津の国の住吉の里へ行くのだと詠む歌である。詞書から、摂津国へ下ったときに知人に出会って詠んだ歌とわかる。地名の「住吉」に「住み良し」を掛け、都に住みわびた身の憂いを、住みよい里への期待に転じている。前歌の第五百三十八首に続き津の国を詠み、次歌の第五百四十首と第五百四十一首の結句「住み憂き」とは、住みよい里と住みづらい浦の対比をなしている。
 作者の「たたみ」は壬生忠見である。壬生忠岑の子で、三十六歌仙に数えられる。天徳内裏歌合で平兼盛と競った百人一首の「恋すてふ」の歌で知られる。

 初句「都には」は、都には、の意で、四句の「里」と対比させている。
 二句「住みわびはてて」は、すっかり住むのがつらくなって、の意で、「はつ」は、すっかり〜する、の意を添える。
 三句「津の国の」は、摂津の国の、の意で、前の二首の第五百三十七首、第五百三十八首と同じく津の国を詠んでいる。
 四句「すみよしと聞く」は、「すみよし」が地名の「住吉」と「住み良し」を掛ける掛詞である。次歌の第五百四十首の結句「浦ぞ住み憂き」、第五百四十一首の結句「浦は住み憂き」と、住みよい、住みづらい、の対比をなしている。
 結句「里にこそ行け」は、里へ行くのだ、の意で、係助詞「こそ」を受けて已然形の「行け」で結ぶ係り結びである。

すみわぶ:住みわぶ。住むのがつらくなる
すみよし:摂津国の地名「住吉」と、「住み良し」を掛ける
作者
壬生忠見
出典
拾遺和歌集
前の歌
難波潟茂りあへるは君が代に あしかるわざをせねばなるべし
次の歌
君なくてあしかりけりと思ふにも いとど難波の浦ぞ住み憂き