露にだに当てじと思ひし人しもぞ
時雨降るころ旅に行きける
- 歌の意味
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露にさえ当てまいと大切に思っていた人が、よりによって時雨の降るこの季節に旅に出て行ったことだ。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 310
詞書「十月ばかりに物へまかりける人に」
露にさえ当てまいと大切にしてきた人が、よりによって冷たい時雨の降る季節に旅立って行ったと嘆く歌である。わずかな露と降りしきる時雨とを対比させ、いたわってきた人を厳しい旅路に送り出す心の痛みを表している。詞書によれば、十月ごろに旅に出た人に贈った歌である。
作者の「たたみ」は壬生忠見である。壬生忠岑の子で、天徳四年の内裏歌合で平兼盛と競った恋の歌で知られる。三十六歌仙に数えられる。
初句「露にだに」は、露にさえ、の意で、「だに」は軽いものをあげて重いものを類推させる副助詞である。
二句「当てじと思ひし」は、当てまいと思っていた、の意で、「じ」は打消の意志を表す助動詞である。
三句「人しもぞ」は、その人がよりによって、の意で、「しも」と係助詞「ぞ」で強めている。本巻の第三百八首の「秋しも」と同じく、時をわきまえない別れを嘆いている。
四句「時雨降るころ」は、時雨の降る季節に、の意で、初冬の景である。前歌の長月に続き、季節は冬に移っている。
結句「旅に行きける」は、旅に出て行ったことだ、の意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形「ける」で結ぶ。
しぐれ:晩秋から初冬にかけて降ったりやんだりする雨
- 作者
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壬生忠見
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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君が世をながつきとだに思はずは いかに別れの悲しからまし
- 次の歌
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別れ路を隔つる雲のためにこそ 扇の風をやらまほしけれ