別れ路を隔つる雲のためにこそ
扇の風をやらまほしけれ
- 歌の意味
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別れの道を隔ててしまう雲のためにこそ、この扇の風を送って吹き払いたいものだ。
- 鑑賞
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巻第六 別歌 311
詞書「物へまかりける人に、馬のはなむけし侍りて扇つかはしける」
旅立つ人との間の別れ路を隔ててしまう雲に向けて、この扇の風を送り、吹き払ってしまいたいと詠む歌である。餞別の品である扇に寄せて、遠く隔たっても互いを見失いたくない心を表している。詞書によれば、旅に出る人のために餞別の宴を開き、扇を贈った時の歌である。
作者の「よしのふ」は大中臣能宣である。伊勢神宮の祭主を務めた大中臣氏の出で、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進と万葉集の訓読に携わった。三十六歌仙に数えられる。
初句「別れ路を」は、別れて行く道を、の意である。
二句「隔つる雲の」は、隔ててしまう雲の、の意である。本巻の第三百四首の「雲居遥かに」と同じく、雲を遠く隔てるものとして詠んでいる。
三句「ためにこそ」は、そのためにこそ、の意で、係助詞「こそ」による強調である。
四句「扇の風を」は、贈る扇であおぐ風を、の意である。本巻の第三百十六首も扇を贈る別れの歌で、扇の歌が呼応している。
結句「やらまほしけれ」は、送りたいものだ、の意で、「まほし」は願望の助動詞であり、係助詞「こそ」を受けて已然形「まほしけれ」で結ぶ。
あふぎ:扇
うまのはなむけ:旅立つ人を送る餞別。またその宴
- 作者
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大中臣能宣
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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露にだに当てじと思ひし人しもぞ 時雨降るころ旅に行きける
- 次の歌
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別れては逢はむ逢はじぞ定めなき この夕暮れや限りなるらん