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難波江の葦の花毛の交じれるは
津の国かひの駒にやあるらん

歌の意味
難波江の葦の花のような毛色の馬が交じっているのは、摂津の国で飼われた、甲斐の駒なのだろうか。
鑑賞
巻第九 雑歌下 537

詞書「廉義公家の紙絵に、青馬ある所に葦の花毛の馬ある所」
 青馬の中に葦の花のような毛色の馬が交じっているのは、摂津の国で飼われた甲斐の駒なのだろうかと詠む歌である。詞書から、廉義公藤原頼忠の家の紙絵に、青馬のいる中に葦の花毛の馬が描かれた場面に添えた歌とわかる。葦の名所である難波江と、駒の名産地の甲斐を、「甲斐」と「飼ひ」の掛詞で結びつけている。ここから第五百四十一首まで、難波と津の国を詠む歌が続く。
 作者の恵慶法師は、平安中期の僧で、播磨国の国分寺の講師を務めたとされる。中古三十六歌仙の一人で、百人一首の「八重むぐら」の歌で知られる。

 初句「難波江の」は、摂津国の難波の入り江の、の意で、葦の名所である。次歌の第五百三十八首の初句「難波潟」と、難波の地名を共有している。
 二句「葦の花毛の」は、葦の花のような毛色の、の意で、白に黒や茶の毛が交じった馬の毛色を、葦の穂にたとえている。次歌の第五百三十八首の四句「あしかるわざを」、第五百四十首の二句「あしかりけりと」と、「葦」の語が難波の歌の中で受け継がれていく。
 三句「交じれるは」は、交じっているのは、の意で、詞書の青馬の中に交じる馬を指す。
 四句「津の国かひの」は、「かひ」が駒の産地の「甲斐」と「飼ひ」を掛ける掛詞である。摂津の国で飼われた、甲斐の駒、の二つの意を重ねている。
 結句「駒にやあるらん」は、駒なのだろうか、の意で、係助詞「や」を受けて推量の助動詞「らん」の連体形で結ぶ係り結びである。

あしのはなげ:葦の花毛。白に黒や茶の毛の交じった馬の毛色を、葦の穂にたとえた語
かひ:駒の産地の「甲斐」と、「飼ひ」を掛ける
こま:駒。馬
あをむま:青馬。青みがかった黒毛の馬
かみゑ:紙絵。紙に描いた絵
作者
恵慶法師
出典
拾遺和歌集
前の歌
なしといへばをしむかもとや思ふらん 鹿や馬とぞ言ふべかりける
次の歌
難波潟茂りあへるは君が代に あしかるわざをせねばなるべし