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老いはてて雪の山をば戴けど
しもと見るにぞ身は冷えにける

歌の意味
すっかり老いて、頭には雪の山のような白髪を頂いているけれども、その冷たさよりも、罰の笞を見ることでこそ身が冷えたことだ。
鑑賞
巻第九 雑歌下 564

詞書「大隅守桜島の忠信が国に侍りける時、郡の司に頭白き翁の侍りけるを召し勘へんとし侍りける時、翁の詠み侍りける」
 すっかり老いて頭に雪の山のような白髪を頂いているが、身が冷えるのはそのためではなく、罰の笞を見たからだと詠む歌である。詞書から、桜島忠信が大隅守として任国にいた時、郡司の白髪の老人を呼び出して罪を問いただそうとしたところ、老人がこの歌を詠んだとわかる。詞書の後に「この歌によりて許され侍りにけり」とあり、この歌によって老人が許されたことが記されている。白髪を雪の山にたとえ、「霜と」と「笞」を掛けて、雪と霜の冷たさと罰への恐れを結びつけた、機知によって身を救った歌である。
 大隅守の桜島忠信は、平安中期の官人で、大隅守を務めた。

 初句「老いはてて」は、すっかり年老いて、の意で、「はつ」は、すっかり〜する、の意を添える。前の歌の第五百六十三首の結句「齢なる人」と、老いた人を詠む点で通い合っている。
 二句「雪の山をば」は、雪の山を、の意で、白髪を雪の積もった山にたとえている。前歌の第五百六十三首の三句と四句の「吉野山」「山より高き」と、山の語でつながっている。
 三句「戴けど」は、頭に頂いているけれども、の意で、「ど」は逆接の接続助詞である。
 四句「しもと見るにぞ」は、「しもと」が「霜と」と罪人を打つ「笞」を掛ける掛詞である。係助詞「ぞ」は結句の「ける」で結ぶ係り結びである。
 結句「身は冷えにける」は、身が冷えたことだ、の意で、「に」は完了、「ける」は過去の助動詞「けり」の連体形である。二句の「雪」と四句の「霜」の冷たさを受けている。

しもと:罪人を打つむちの「笞」に、「霜と」を掛ける
めしかんがふ:召し勘ふ。呼び出して罪を問いただす
こほりのつかさ:郡司。国司のもとで郡を治めた役人
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
いにしへも登りやしけん吉野山 山より高き齢なる人
次の歌
見れど飽かぬ吉野の河の流れても 絶ゆる時なく行き帰り見む