包めども隠れぬものは夏虫の
身よりあまれるおもひなりけり
- 歌の意味
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包んでも隠れないものは、蛍の身からあふれ出る火、すなわち我が身にあまる恋の思いであったことだ。
- 鑑賞
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巻第四 夏歌 209
詞書「桂のみこの、蛍をとらへてと言ひ侍りければ、童の汗衫の袖に包みて」
包んでも隠れないものは、蛍の身からあふれ出る光、すなわち身にあまる恋の思いであったと詠んだ歌である。汗衫の袖に包んでも漏れる蛍の光に、抑えても隠しきれない恋心を重ねている。
詞書によれば、桂のみこが蛍を捕らえてと言ったので、童が汗衫の袖に蛍を包んで詠んだものである。桂のみこは宇多天皇の皇女孚子内親王である。大和物語にも同じ歌が見え、桂のみこのもとに仕える童女が恋心を託して詠んだ歌として語られている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
藤原定家の定家八代抄にも採られている。
初句「包めども」は、包んでも、の意で、詞書の汗衫の袖に蛍を包むさまを受けている。「ども」は逆接を表す。
二句「隠れぬものは」は、隠れないものは、の意である。
三句「夏虫の」は、ここでは蛍を指す。本巻の第百九十四首、第二百十三首にも「夏虫」が詠まれている。
四句「身よりあまれる」は、身からあふれ出る、の意で、蛍の小さな身から漏れる光と、我が身に収まりきらない思いとを重ねている。
結句「おもひなりけり」の「おもひ」は、恋の「思ひ」と、蛍の光である「火」を掛けた掛詞である。「けり」は気づきの詠嘆を表す。
おもひ:恋の「思ひ」と、蛍の光である「火」を掛ける
かざみ:童女が着る上着、汗衫
なつむし:夏の虫、ここでは蛍
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
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秋近み夏果てゆけば郭公 鳴く声かたき心地こそすれ
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天の河水まさるらし夏の夜は 流るる月の淀む間もなし