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かくてのみありその浦の浜千鳥
よそになきつつ恋ひやわたらむ

歌の意味
こうしてばかりいて、荒磯の浦の浜千鳥のように、遠く離れたところで泣きながら恋い続けるのだろうか。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 631

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 このようにばかりして、荒磯の浦の浜千鳥のように、遠く離れて泣きながら恋い続けるのだろうか、と詠む歌である。「ありそ」に「在り」と「荒磯」、「なき」に千鳥の「鳴き」と自分の「泣き」を掛け、近づけないまま離れて鳴く浜千鳥に、逢えずに泣く自分をよそえている。第六百四十三首の呼子鳥も「なきやわたらむ」と結び、鳥に託して泣き続ける恋を詠んでいる。

 初句「かくてのみ」は、こうしてばかり、の意である。
 二句「ありその浦の」は、「ありそ」が、かくてのみ「在り」の意と、荒い磯の「荒磯」を掛ける掛詞である。
 三句「浜千鳥」は、浜辺の千鳥で、四句の「なき」を導いている。
 四句「よそになきつつ」は、「なき」が千鳥の「鳴き」と自分の「泣き」を掛ける掛詞で、「よそに」は離れたところで、の意である。次歌の第六百三十二首の初句「よそにのみ」と、「よそ」の語を共有している。
 結句「恋ひやわたらむ」は、恋い続けるのだろうか、の意で、係助詞「や」は疑問を表し、「む」の連体形で結ぶ係り結びである。第六百四十三首の結句「なきやわたらむ」と同じ形である。

ありそ:「在り」と、荒い磯の意の「荒磯」を掛ける
なく:千鳥が「鳴く」意と、自分が「泣く」意を掛ける
こひわたる:恋ひわたる。恋い続ける
作者
よみ人しらず
出典
拾遺和歌集
前の歌
夢よりぞ恋しき人を見そめつる 今はあはする人もあらなん
次の歌
よそにのみ見てやは恋ひむ紅の 末摘む花の色に出でずは