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吹く風や春立ち来ぬと告げつらん
枝にこもれる花咲きにけり

歌の意味
吹く風が春が来たと告げたのだろうか。枝の中にこもっていた花が咲いたことだ。
鑑賞
巻第一 春歌上 12

詞書「寛平御時后宮の歌合の歌」
 枝の内にこもっていた花が咲いたのを見て、吹く風が春の到来を告げたからだろうかと推し量った歌である。目に見えない風を春の使いとし、花がそれに応えて咲いたという趣向である。
 詞書によれば、寛平年間、宇多天皇の御代に催された后宮の歌合で詠まれた歌である。后宮は宇多天皇の母、班子女王を指す。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「吹く風や」の「や」は疑問の係助詞で、三句の「らん」と呼応する。前歌の第十一首の「春風」と同じく、風が春を運ぶものとして詠まれている。
 二句「春立ち来ぬと」は、春がやって来たことを表す。
 三句「告げつらん」の「つらん」は完了の「つ」に推量の「らん」がついたもので、告げたのだろうかと推し量っている。ここで句切れとなる。
 四句「枝にこもれる」は、まだ枝の内に隠れていた花のつぼみを示す。
 結句「花咲きにけり」の「けり」は詠嘆で、花が咲いたことに気づいた驚きを表す。

うたあはせ:歌人が左右に分かれて歌を詠み、優劣を競う催し
こもる:内に隠れている
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
水の面にあや吹き乱る春風や 池の氷を今日は解くらむ
次の歌
春日野に生ふる若菜を見てしより 心を常に思ひやるかな